遺留分侵害額請求:調停に進むときの申立て方法について

行政書士のみつおです。

 

今日は相続についてのお話をしたいと思います😁

 

相続が発生した際、一定の相続人の遺留分を守る権利が遺留分侵害額請求権です。
簡単に言うと、相続の際に侵害された遺留分に応じた額を金銭によって、受遺者(贈与や遺贈を受けた者)へ請求できるというものです。

 

この遺留分侵害額請求権は、2019年7月1日に民法が改正されるまでは、遺留分減殺請求権と呼ばれていました。
遺留分侵害額請求権となってからは、金銭による請求に一本化されましたが、請求方法や調停、訴訟に関してやることは基本的に同じです。

 

そこで今回から3回に分けて遺留分侵害額請求について解説します。

本記事では、遺留分侵害額請求で調停に進むときの申立て方法について紹介します。

 

■遺留分侵害額請求権とは

遺留分侵害額請求権とは、自分の遺留分が遺贈、贈与、相続分の指定等で侵害されたときに、受遺者(遺贈や贈与等を受けた者)に対して、遺留分の侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができる権利です。

 

この権利を持つ相続人は、遺留分権利者と呼ばれます。
遺留分権利者となるのは、被相続人の配偶者、子、直系尊属で、兄弟姉妹は含まれません。
また、被相続人に子がいる場合は、直系尊属も遺留分権利者とはなりませんのでご注意ください。

 

遺留分侵害額請求権は、権利者からの一方的な行使によって、相手方に支払いの義務を発生させるものです。
請求方法としては、証拠を残すために内容証明郵便を送付して相手方へ請求を行った後、遺留分侵害額や金銭の支払い方法などについて相手方と協議することが一般的です。

 

ですが相手方が素直に支払いに応じるケースは多くはなく、当事者同士の協議で決着できない場合は、裁判所の調停を検討する必要があります。

 

■遺留分侵害額請求の調停とは

調停とは、裁判所へ申立てを行って、裁判官・調停委員を仲介として話し合いによって問題解決する手続です。
裁判所と聞くと、最終的に判決がでると思われる方もいますが、調停はあくまでも話し合いによる解決ですからご注意ください。

 

遺留分侵害額請求のような相続に関する問題は、多くの場合家族・親族間のものです。
ですから、いきなり訴訟をするのではなく、まず家庭裁判所の調停で話し合いによる解決を試みなければなりません。
調停の申立てをせずに、いきなり遺留分侵害額請求訴訟を起こした場合、基本的には家庭裁判所によって調停手続きの方へ回されることになります。

 

ただし、これは絶対ではありません。
当事者が調停による話し合いを完全に拒否していて、調停での解決は難しいことが明らかな場合など、裁判所が調停に回すことは難しいと判断したときは、そのまま訴訟手続が開始されることもあります。

 

■遺留分侵害額請求調停の申立て方法

遺留分侵害額請求調停の申立ては、管轄の家庭裁判所へ申立書及び必要書類を提出して行います。
家庭裁判所の管轄については、後程別項目で説明します。

 

申立書には、決まった書式がありますので裁判所で入手するか、裁判所のサイトからダウンロードしてください。

 

参考:

遺留分侵害額の請求調停の申立書 | 裁判所

■申立書の記入について

申立書は、以下のような構成になっています。

  1. 申立て内容、申立人と相手方の住所・氏名・生年月日等
  2. 申立ての趣旨と理由
  3. 遺産目録

このうち(1)と(3)は、分かっている内容を記入するだけです。
(2)「申立ての趣旨と理由」に関しては、記入例があるものの罫線のみですからポイントを押さえて記入しなければなりません。

 

■「申立ての趣旨」の記入

この欄には、調停で申立人が相手方に求める結論について記入します。

遺留分侵害額請求は遺留分の侵害額について金銭の支払いを求めるものです。
ですから相手方に求める結論として、請求する金額をはっきり記載するのが望ましいでしょう。

 

ただし、請求金額が不明瞭な場合もあります。
たとえば、遺産にマンションがあった場合、不動産業者に簡単に査定してもらっただけでは、正確な算定は難しく、遺産総額が不正確ですから、請求する遺留分侵害額も不正確になってしまいます。

 

ですから、このような場合は、無理に金額を記入しなくても構いません。
遺産総額や遺留分侵害額がいくらかという話は、調停の中で話し合うべき内容でもありますから、申立ての段階で、金額が不明瞭な場合は「遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを求める」というような記載で十分です。

 

■「申立ての理由」の記入

この欄には、裁判官・調停委員に事件の内容と申立人の主張を理解してもらうために記入します。

 

事件の内容については、調停が始まった後で口頭でも説明することができますから、細かく書き過ぎずポイントを押さえたものとなるように気をつけましょう。

 

ポイントは以下の内容です。

  • 被相続人
  • 相続人(法定相続人)
  • 遺産内容
  • 遺留分の内容
  • 遺留分侵害額の内容

 

記載内容は、このポイントに限られませんが、事件の内容がつかめれば問題ありませんので、細かくなり過ぎないように注意しましょう。

 

また、記入した申立書はコピーをとって、コピーとともに提出します。
申立書のコピーは家庭裁判所から相手方へ送付されます。
「申立ての理由」欄を使って、相手方を攻撃したり非難したりする記載を行ってしまうと、調停での話し合いを円滑に進めることができなくなってしまう可能性がありますので、ご注意ください。

 

■申立てに必要な添付書類

作成した申立書と合わせて提出しなければならない添付書類があります。

 

  1. 申立書(遺産目録も含む)
    相手方の人数分のコピーを添付しなければなりません。
  2. 戸籍関係の書類
    ・被相続人が生まれてから死亡した時までのすべての戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍謄本)
    ・相続人全員の戸籍謄本
    必要となる戸籍関係の書類は、被相続人と相続人の親族関係により異なる場合がありますので、申立て前に管轄の家庭裁判所へ問合せが必要です。
  3. 遺産の内容を証明する書類
    ・不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)
    ・固定資産税評価証明書
    ・預貯金通帳のコピーもしくは金融機関の残高証明書
    ・有価証券の内容がわかるもの
    ・負債がある場合は、負債内容がわかる契約書や請求書等
  4. 遺言書のコピーまたは遺言書検認調書謄本のコピー

 

■結び

遺留分侵害額請求で調停に進むときの申立て方法について解説しました。

次回は遺留分侵害額請求調停にかかる費用や流れについて詳しくご紹介したいと思います🙂