遺留分侵害額請求:調停の流れ・費用・管轄について

行政書士のみつおです😀

 

前回から遺留分侵害額請求について解説しています。

この記事では、遺留分侵害額請求の調停の流れ・費用・管轄について紹介します。

 

 

■遺留分侵害額請求調停にかかる費用

遺留分侵害額請求の調停にかかる費用は、家庭裁判所へ支払う費用、調停に出席するための交通費等、弁護士へ依頼した場合の弁護士報酬です。

 

家庭裁判所へ支払う費用は下記の通りです。

 

  1. 申立手数料
    収入印紙1,200円分
    最初に提出する申立書の原本に貼付します。
  2. 予納郵便切手代
    連絡用の郵便切手ですが、申立先の裁判所によって必要な切手は異なりますので、裁判所へ確認が必要です。

 

 

■遺留分侵害額請求調停の管轄

遺留分侵害額請求の調停の申立ては、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所へ行います。

 

申立人と相手方双方の合意によって管轄する家庭裁判所を決めた場合は、合意によって定められた家庭裁判所を管轄とすることも可能です。

 

相手側と話し合いができないような状態ですと、基本的に相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行うしかありません。
調停もその家庭裁判所で行われますので、遠方の場合は調停に参加するために交通費や宿泊費が必要になってきますから注意が必要です。

 

 

■遺留分侵害額請求調停の流れ

管轄の家庭裁判所へ、申立書と必要書類一式を提出すると、調停を申立てたということになります。
なお申立書等の提出は、直接持参しても郵送しても構いません。

 

ここでは、遺留分侵害額の請求調停を申立てた後の、調停の流れについて説明します。

 

■調停期日の通知

申立書が適正に受理されると、裁判所の書記官から連絡があります。
この連絡で、調停の第1回目の期日をいつにするか調整を行いますが、通常は1ヵ月半から2ヵ月先の期日となります。

 

調停が行われる時間は、一般的には平日(月~金)の午前10時から12時、午後1時から午後3時の間です。

 

書記官との調整により第1回期日が決定すると、裁判所から相手方(複数の場合もあります)に対して申立書のコピーと調停期日を通知する呼出状などの書類が郵送されます。

 

 

■第1回目の調停

調停は、裁判官1名と調停委員2名が選任され調停委員会として担当します。
調停委員は裁判所員ではなく、2名の内1名は弁護士であることが一般的です。

 

まず、第1回目の調停では、裁判官から申立人、相手方に対して調停手続きの概要についての説明があります。
この説明には通常の場合、関係者全員が同席しますが、申立人と相手方の感情的な対立が激しい場合などは、事前に申し出ることで個別説明としてもらうこともできます。

 

裁判官からの説明の後、申立人と相手方は、それぞれ順番に調停室に入りますので、お互いを気にせず話をすることができます。
調停室では、調停委員がそれぞれの話を聞きながら調停を進めていきますが、基本的に裁判官は同席しません。
しかし、法律的に複雑な事案の場合、裁判官が同席して直接話を聞くこともあります。

 

第1回目の調停の終わりに、次回の調停期日の日程調整を行います。
このとき、追加書類が必要な場合は、提出の指示があります。
なお、調停の日程にもよりますが、次回の期日までに書記官から追加書類提出の連絡があることもありますので、その際には対応が必要です。

 

 

■調停の終了まで

申立人と相手方が合意に達するまで、調停が繰り返し行われることになります。

 

遺産相続に関する問題には色々ありますが、遺留分侵害額請求調停では、ほとんどの場合で遺留分侵害額がいくらなのかが話し合いの中心となります。

 

遺留分侵害額の算定においては、遺産に含まれる不動産の評価額が大きな影響を及ぼします。
路線価格、公示価格、近隣の不動産取引における事例などの資料を提出し、自身が主張する侵害額に合理性があることを証明することがポイントになります。

 

調停を繰り返した結果、合意に達した場合はその合意内容を記載した調停調書を作成し、調停成立となります。

 

調停には基本的に期限はありませんが、どうしても合意できないという場合は調停不成立となり終了します。
調停不成立となった場合は、訴訟で決着づけるしかないということになります。

 

■調停が成立した場合

調停によって申立人と相手方が合意した場合は、調停成立となります。
調停が成立すると、合意した内容を記載した「調停調書」が作成され、双方はこの内容に従うことになります。

 

調停調書には判決と同じ効力がありますので、調書に記載された通りに相手方は金銭を支払わなければならず、相手方が支払わない場合は強制執行を行うことができます。

 

■調停不成立となった場合

調停委員会(裁判官1名、調停委員2名)が、話し合いによって当事者間の合意が成立する見込みがないと判断した場合、調停不成立となって終了します。

 

調停が不成立となった場合、家庭裁判所から当事者へ、調停が不成立となった旨の通知が送られます。
基本的に、調停が不成立で終了した場合は、訴訟を提起するしかありません。
訴訟提起にも必要な収入印紙金額がありますが、調停不成立の通知を受けた日から2週間以内に遺留分侵害額請求の訴訟提起を行う場合は、調停申立て時に納付した収入印紙1,200円分を差し引いてもらえます。

 

なお、訴訟提起の際には調停不成立証明書を提出しなければなりませんので、家庭裁判所へ証明書の交付を申請して取得しておきましょう。

 

■裁判所から取下げ勧告される場合

調停成立、不成立以外にも、裁判所からの取下げ勧告により調停が終了となる場合があります。

 

遺留分侵害額請求の調停において、話し合いの中心となる遺留分侵害額がいくらかという問題に関しては、相続人の範囲、対象となる遺産、遺言書の有効性といった前提になる事実が明確になっていなければなりません。
このような前提となる事実に関する問題を前提問題と呼びます。

 

前提問題に争いがあったとしても、遺留分侵害額請求調停に関係する当事者だけの問題で、この前提問題について当事者の話し合いによって解決する可能性があれば、調停を続けることができます。

 

しかし、前提問題が調停の当事者だけでなく他の相続人にも関係がある場合や、前提問題に関する対立が激しい場合は、遺留分侵害額請求の調停は続けることができません。
そのような場合、裁判所からは前提問題を先に訴訟などによって解決することを求められ、遺留分侵害額請求の調停については申立ての取下げを勧告されます。

 

 

 

■結び

今回は遺留分侵害額請求の調停の流れ・費用・管轄について解説しました。

 

次回は遺留分侵害額請求訴訟についてご紹介したいと思います🙂