遺産分割の割合はどうやって決める?(2)法定相続分の計算方法

行政書士のみつおです😀

 

前回は、遺産分割の割合決定方法などについて解説いたしました。

今回は、法定相続人ごとの相続分を確認してから、ケース別に法定相続分を計算してみたいと思います。

 

■法定相続人ごとの相続分を確認

次に、相続関係の知識の基本である法定相続制度について確認しましょう。
法定相続人ごとの相続分を見ていきます。

 

■法定相続人ごとの相続分割合

法定相続人ごとの相続分割合は、被相続人の配偶者を基準に考えるとわかりやすいでしょう。

 

配偶者の相続分割合

子とともに相続人となる 配偶者が1/2、子が1/2
直系尊属とともに相続人となる 配偶者が2/3、直系尊属が1/3
兄弟姉妹とともに相続人となる 配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4


なお、配偶者には内縁のパートナーや離婚した元夫(元妻)は含まれません。
また、被相続人の養子、婚外子も実子と平等の法定相続分を有します。
被相続人の兄弟姉妹が相続人となる場合、被相続人と両親の一方を異にする兄弟姉妹の法定相続分は、両親を同じくする兄弟姉妹の1/2となります。

 

■法定相続人の優先順位

被相続人の子、直系尊属、兄弟姉妹は、相続する優先順位が決まっています。
最優先が子であり、次の順位が直系尊属です。
つまり、被相続人の子がいないときに初めて、直系尊属が相続人となるということです。

 

そして、被相続人の子も直系尊属もいないときに初めて、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。
なお、前述の通り、配偶者は常に法定相続人なので、他の法定相続人とともに相続します。

 

法定相続人の順位

常に相続人 配偶者
第1順位 被相続人の子
第2順位 被相続人の直系尊属
第3順位 被相続人の兄弟姉妹

■法定相続人の注意点

代襲相続、相続の承認・放棄、相続欠格・廃除があると、相続人がかわります。
それぞれの概要を見ておきましょう。

□代襲相続について

代襲相続とは、法定相続人が被相続人により先に亡くなっているケースで、「親に代わって相続する」ことをいいます。
たとえば、被相続人Xの子Aが、Xより先に亡くなっていた場合、Aに子aがいれば、aが代襲相続人としてXを相続します。
Xの子Aの代わりに、Xの孫aが相続(代襲相続)するということです。


直系卑属は子、孫、ひ孫と何代も代襲相続できますので、注意しましょう。

 

代襲相続の可否

  代襲相続の有無 注意点
あり 孫、ひ孫など
直系尊属 なし 祖父母は代襲相続しない
兄弟姉妹 あり 1代限り(甥、姪まで代襲相続)


なお、相続放棄した人の子は代襲相続できません。

□相続の放棄

相続は、人が亡くなると自動的に発生するものですが、相続人が相続を承認したり放棄したりすることができます。
ただし、相続の承認・放棄できる期間が定められています。
これは、いつまでも相続関係を不安定にするわけにいかないためです。

 

相続の承認・放棄には以下の3種類があります。


相続の放棄や承認と期間、方法など

  相続放棄 限定承認 単純承認
期限 原則として相続開始を知ったときから3ヶ月以内
方法 家庭裁判所に申述
(限定承認は相続人全員で)
相続開始を知ったときから3ヶ月以内に相続放棄や限定承認しなければ単純承認とみなされる
効果 始めから相続人ではなかったことになる 相続財産の範囲で債務を引き継ぐ プラスもマイナスも引き継ぐ


相続放棄は遺産分割協議で「相続分はいらない」と同意することと、大きく違うので注意してください。

 

よく聞くのが、「あの人は放棄したんだから」という他の相続人の主張です。
しかし、相続放棄は生前にはできませんし、口頭でもできません。


家庭裁判所に期間内に相続放棄を申述していない相続人を除外して遺産分割協議をすることはできません。
また、遺産分割協議では債務について相続人間で誰が負担するか話合いできますが、債権者に対して対抗することはできません。


これに対して相続を放棄した人は、相続開始時から相続人ではなかったことになり、財産も債務も一切引き継ぎません。

□相続の欠格・廃除

相続放棄と違い、相続欠格事由と相続廃除は、代襲相続をさまたげません。

 

相続欠格事由とは、当然に相続人資格を失う原因のことです。
遺言書関係で相続人にふさわしくない行為をした者や、被相続人を殺害の意図で死亡させた者などが、相続欠格にあたります。

 

相続廃除とは、被相続人に対して虐待や重大な侮辱を加えた者に相続させない旨の手続きです。
相続廃除は相続欠格と違い、被相続人が遺言により廃除し、遺言執行者が手続きをしなければなりません。

■ケース別に法定相続分を計算してみる

次に、法定相続人のケース別に法定相続分を計算してみましょう。
子、直系尊属、兄弟姉妹が配偶者とともに法定相続人になるケースをそれぞれ見ていきます。

 

■配偶者と子が法定相続人のケース

たとえば、次のケースで考えます。

  • 被相続人X
  • 法定相続人妻Yと子A
  • 相続財産3,000万円


配偶者と子は配偶者が1/2、子が1/2の割合で相続分を有するので、妻Yは1,500万円、Aは1,500万円相続します。

■配偶者と直系尊属が法定相続人のケース

今度は、次のケースで考えます。

  • 被相続人X
  • 法定相続人妻YとXの父母AとB(Xの子も孫など代襲相続人もいないものとする)
  • 相続財産3,000万円


この場合は、配偶者が2/3、AとB合計で1/3の割合で相続します。

 

そして、父母は3/1を同じ割合で相続します。
したがって妻Yは2,000万円、父Aは500万円、母Bは500万円を相続します。

 

□配偶者と兄弟姉妹が法定相続人のケース

次のケースは、配偶者と兄弟姉妹が法定相続人の場合です。

  • 被相続人X
  • 法定相続人妻YとXの兄A(Xの子も孫など代襲相続人も、父母もいないものとする)
  • 相続財産3,000万円

 


この場合は、配偶者が3/4、兄が1/4の割合で相続します。
したがって妻Yは2,250万円、兄Aは750万円を相続します。

□父母の一方が被相続人と異なる兄弟姉妹のケース

父母の一方が被相続人と異なる兄弟姉妹が相続人であるケースも見ておきましょう。
次の例で考えます。

  • 被相続人X
  • 法定相続人妻YとXの兄A、妹B(Bの母はXの母と違う。Xの子も孫など代襲相続人も、父母もいないものとする)
  • 相続財産3,000万円


この場合は、配偶者が3/4、兄が1/4の割合なので、妻Yは2,250万円、兄Aと妹B合計で750万円を相続します。
兄AはXと父母の双方を同じくしていますが、妹Bの父母の一方はXと異なります。


したがって、次の計算式で、兄Aと妹Bの法定相続分を計算します。


兄A:妹B=2:1

 

このケースでは、兄Aは500万円、妹Bは250万円を相続します。

 

■結び

今回は法定相続人ごとの相続分や法定相続分の計算方法などをみていきました。

 

次回は遺言書がある場合の遺産分割割合などについてみていきたいと思います。