障がいを持つ子を育てるあなたへ(2) 任意後見制度の活用

行政書士のみつおです😀

 

私には、2歳の息子がいます。
幼稚園に通う予定です。
今、幼稚園は3歳から無償で通えるようになっています。
少子高齢化が進むと、昔では思いもよらないことが普通になります😅


意外と幼稚園代も安くはないので助かっています😄

 

リンク:「障がいを持つ子を育てるあなたへ(1) 親亡き後問題とは?」

さて、この記事では、前回紹介した「親亡き後問題」について考えていきます。

 

■判断能力を失った場合への対策

 

障がいを持つ子への相続を考えるとき、問題の1つとして、Aさんが認知症等で判断能力を失った場合があります。

このとき、Cさんや施設に金銭を給付できなくなるリスクが浮かび上がりました。

今回は、このリスクへの対策を考えていきます。

 

Aさんを被後見人とする任意後見制度の利用を検討します。

この場合の任意後見人候補者はBさん、Dさんまたは行政書士、弁護士等の専門職です。

複数後見人とすることも可能です。

 

■任意後見契約を活用する

 

任意後見契約は公正証書で締結します(任意後見契約に関する法律3条)。

その条項でAさんがどのような法律行為を任意後見人に委任するかを規定しておきます。

 

任意後見契約が締結されたら、公証役場からの嘱託で東京法務局備付けの後見ファイル(登記簿)に締結の事実が登記されます。

 

そして、実際にAさんが判断能力を失い、家庭裁判所に申し立てて任意後見監督人が選任されることによって任意後見契約が発効します(同法2条1号)。

そこで任意後見人がCさんや施設に給付していくことになります。

 

なお、後見人はAさんのためにAさんの財産を使うことが主眼になるため、扶養義務のあるCさんへの給付はともかく(民法877条1項)、施設への寄付を継続できるか否かは問題があり、少なくとも任意後見契約でAさんの意向を明確にしておく必要があります。

 

したがって、Aさんの意向を十分に理解しているBさんを任意後見人候補者として任意後見契約を締結しておくことがAさんの意志が実現しやすくなります。

 

ただし、成年後見の終期はCさんの死亡時であるため、Dさんも後見人候補者に加えて複数後見人で臨む態勢が必要になります。

もっともDさんは今後結婚して後見事務に携われなくなる可能性もあるので、行政書士、弁護士等との複数後見で臨むことも考えられます。

なお、任意後見人は任意後見監督人の監督に服します。

 

また、任意後見はAさんの死亡によって終了するため、その後のCさん等への給付はできません。

 

■法定後見契約を活用する

 

次にAさんが判断能力を失ってから法定後見制度を利用することも考えられます。

 

この場合、後見人候補者欄にBさん、Dさんを記入することができます。

しかし、家庭裁判所の後見審判で必ずしも親族後見人が選任されるとは限りません。

行政書士、弁護士等の専門職が後見人に選任される可能性があるほか、後見人Bさん、Dさんに専門職の後見監督人が付される場合があります。

 

もっとも、いずれにしてもDさんの協力が不可欠になります。

 

■結び

 

任意後見契約や法定後見を活用して、不測の事態に対応するにはどうするか、流れを説明してきました。

もちろん、自分の意向を実行しやすいのは判断能力があるうちから進めることです

 

自分のケースに当てはめると、どういう制度を利用するべきか迷うこともあるでしょう。

そういうときも行政書士にご相談ください。

 

 

障がいを持つ子を育てるあなたへ(1) 親亡き後問題とは?

行政書士のみつおです😀

 

小学生になる娘がいます。
最近の小学校はデジタル化が進んでいますね。
一人一台、iPadが教材として配られて、
家にネットがない家庭だったらwifiが配られます。

公立ですよ?😅
そういう部分は羨ましく思ったりします。

 

さて、相続の問題を生前扱うとき、自分の亡き後どうなるのだろうと不安を抱えることが多々あります。

その状況には、不安に感じている当人はいません。

今回から数回、その際たるものとして障がいを持つ子に相続をさせる場合について取り上げていきます。

 

■リーディングケース

 

このような状況を考えて見ましょう。

登場人物は以下の通りです。

□Aさん(本人、77歳)

□Bさん(妻、72歳)

□Cさん(子、44歳)

□Dさん(子、39歳、独身、会社員)

 

Aさんには2人の子がいて、そのうち、Cさんには先天的な障がいがあります。

Cさんは1人で身の回りの世話ができないために施設に入っています。

 

Aさん夫婦は毎月何回か施設に訪問してCさんに会っています。

施設への支払いとしては、Cさんの入居費用を支払っています。

そのほか、Cさんが過ごしやすいように施設への寄付も行なっています。

 

Dさんも毎月のようにCさんを訪問して何かと世話してくれています。

Aさんは、自分や妻が亡き後、Cさんを十分に支えていければ心配に思っています。

「自分や妻が元気なうちはいいが、そうでなくなってしまえばどうなるのだろう。」

「健常な方の子に過度な負担をかけたくない。結婚したり、仕事の都合で遠くに引っ越してしまえばどうなるのだろう。」

 

このような状況を考えていきます。



「親なき後問題」

 

このような問題はいわゆる「親なき後問題」といわれます。

Aさん夫婦にとっては、自分たちが死亡した後、障がいを持つCさんが無事に安楽に一生を過ごせるかが心配で、死んでも死にきれない気持ちが強いでしょう。

 

このような場合は、単一の対策ではなく、対策を複合的に組み合わせることが重要です。

 

問題を整理して見ましょう。

以下のように、リスクとして3つあると考えられます。

 

①Aさんが認知症等で判断能力を失った場合、Cさんや施設に金銭を給付できなくなる可能性

②Aさんが死亡した場合、一括で財産を相続させてもCさんが管理できず、悪徳業者などによる横領被害に遭う可能性

③Aさん夫婦が死亡した後、誰がどのようにCさんの面倒を見ていくのか

 

■結び

 

核家族化が進む中で、このリーディングケースのように先天的に障がいを持っていたり、そうでなくても病気や事故で身の回りのことが自分でできなくなることがあります🙁

 

このような状況で相続を考えるとき、まず問題点を洗い出してそれに対して個別に対策を考えていきたいですね😊

次の記事から、ここで洗い出した問題点に対して個別に解決策を探っていきます。

 

行政書士は、そのような相談にも応じますのでお気軽にご連絡ください。

 

相続人がいないときどうなる? (2)

行政書士のみつおです😀

 

今年は梅雨が早いですね。

洗濯物が乾かない今日この頃です。

タオルが少しピンク色に見えてきた、ということがあったら要注意です😱

もしかしたら、そういうカビが生えているのかもしれません。

 

殺菌ができる洗剤で漬け置きしてから洗えばまだ大丈夫です。

なんでも始めが肝心です

 

 

前回から、相続人不存在という状態について説明してきました。

私は、いずれのケースも、どことなく被相続人にとって物悲しい状態と感じてしまいました。

でも、実際には、物悲しいだけではなく、とても困る、という場合も出てきます。

今回は、その問題点と解決法について掘り下げていきます。

 

困る人たち

 

□金融機関

 

被相続人が借金を超過していて、相続人全員が相続放棄手続きをとる事態が発生した時のことを考えましょう。

このとき、お金を貸していたのは金融機関が多いのではないでしょうか。

もちろん個人が貸していたというケースもあると思います。

 

もちろん、そのような債権者は、債権を回収する手続きを進めていくことになります。

そこで困るのが、取引の相手が存在しないってことになります。

相続がなされた場合は、その相続人が取引の相手になります。

でも、相続人不存在の場合は誰と進めていけばよいか、という問題点が発生します。

 

被相続人が貯金をしていた場合は、金融機関の場合、預金債権と貸金債権を相殺できます。

プラスとマイナスを通算するイメージです。

 

このとき、「相殺する」っていう意思を相手方に伝えなければいけないのです。

しかし、相続人不存在の場合はそれを伝える相手がいない、というわけです。

 

担保をとっている場合も同じです。

抵当権設定していたり、質権設定をしていたりしていたものに対して、担保権行使手続きをして回収できる、と踏んでお金を貸しています。

このときもまた、誰に対して行うのか、という問題が発生します。

 

担保取得されていない被相続人の自由財産がある場合、債権回収をどうすればよいかとの課題もあります。

せっかく財産があるのなら、通常は残された財産から返してもらいたい、と考えるわけです。

 

□遺言書で指定された人、特別縁故者

 

被相続人が遺言書を遺していた場合、遺言で指定された人は、相続財産を譲り受けることができるのですが、それは誰に言えばいいのでしょう?

ここでも誰と手続きを進めていけばいいのか、という問題があります。

 

また、被相続人と生計を共にしていた、とか身の回りの世話をしていた、という人もいるかと思います。

相続人がいないとき、相続財産は誰も引き取り手がいなかったら国のものになるわけですが、特別な縁故がある人がいる場合にその人たちにも財産が分与されるのです。

被相続人と特別な縁故のある、方々も困ってしまうのです。

 

救う人たち

 

前に取り上げた問題を解消するための手段が、相続財産管理人の選任である。

相続開始し、相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は法人とされます。

 

家庭裁判所は利害関係人または検察官の請求によって相続財産管理人を選任しなければならないとされています。

 

被相続人に対し融資債権を持つ金融機関は利害関係人として選任申立てが可能です。

相続財産管理人が選任された後は、その人に対しもろもろの手続きを踏んで債権回収を図ることとなります。



結び

 

相続財産管理人によって困った事態が打開できることを説明してきました。

日常の取引は相手がいるからできることであって、いなくなると不都合がとても多いです😓

自分の死後、相続人がいない可能性があるときは遺言書を残しておくことをお勧めいたします。

そういうときも行政書士にご相談ください。

相続人がいないときどうなる? (1)

行政書士のみつおです😀

 

5月といえば連休もあり、4月から新生活が始まった方にとって一服できる、という期間ではないでしょうか。

昨年から新型コロナウィルス感染症の拡大を受け、連休にしたいこと・できることが一変しました😓

そんなときでも、何かしらプラスになることを、と考えてこのブログを書いています。

 

今回から、2回にかけて相続人不存在というケースについてとりあげます。

相続人がいないときって相続はどうなる、と不安に思っている方もいるのではないでしょうか。

身寄りのない方、または近しい親類となんらかの事情があって関わり合いになりたくない、という方も少なからずいます。

今回は、相続人不存在となった場合の問題点について取り上げます。

 

◼相続人がいないってどういうこと?

 

相続人がいないパターンとして、以下の様なケースがあります。

 

□被相続人に第三順位相続人までに該当する相続人がまったく存在しないとき

 

相続人になれる人は、民法で順番が決まっています。

以下の順番です。

  1. 配偶者

  2. 子(が亡くなっている場合には孫)

  3. 親(が亡くなっている場合には祖父母)

  4. 兄弟(が亡くなっている場合には甥姪)

 

これらの人がいないとき、相続人不存在の状態になります。

 

□相続人全員が相続放棄手続きをとったとき

 

上で説明したように、相続人がいても、なんらかの原因で全員相続放棄をした場合も出てきます。

被相続人に多額の借金があると判明している場合にそのような対応を取る相続人が多いです。

相続できる順位にあるけれども、生前に関わり合いがなく疎遠であったりした場合もあります。

 

□欠格や廃除によって相続人がいなくなった時

 

この他にですが、欠格や廃除されて相続人にならないというケースもあります。

相続人にとってマイナスの行為を行なった人は相続をすることができない、というケースです。

欠格は民法で決められた悪いことを行なった場合に相続ができなくなります。

被相続人を自分に有利な(被相続人にとっては不本意な)遺言を書かせる目的で、悪いことをした場合です。

相続人となるであろう人を殺害したり、被相続人を脅迫したり。

 

廃除は、被相続人の生前の意思で行います。

ある人に相続させたくない、と家庭裁判所に申立て、それが認められればその相続人の相続権は失われます。

相続人となるであろう人による虐待や侮辱行為が行われたときに申し立てることができます。



◼結び

 

相続人不存在の場合は被相続人がせっかくの財産を相続できなくなります。

そして、さらに困るのは被相続人にお金を貸している、といったケースです。

相続放棄されてしまい、相続人から回収できない、というケースですね。

 

次の記事では、この問題点と解決策について深く掘り下げていきます

 

遺産分割の割合はどうやって決める?(3)遺言書がある場合の遺産分割割合

行政書士のみつおです😀

 

前回、前々回と、遺産分割についてそれぞれ詳しくみていきました。

今回は遺言書がある場合に遺産分割の割合はどうなるのかみていきたいと思います。

 

■遺言書がある場合の遺産分割割合

ここまでで、遺産分割の方法や法定相続分を見てきました。
次に、遺言書がある場合の遺産分割割合を見ておきましょう。
遺留分を害する遺言書による遺産分割の指定の効力や遺留分侵害額請求についても確認します。

 

■遺言書による遺産分割割合の指定

被相続人は、「遺言で、遺産の分割の方法を定め、もしくはこれを定めることを第三者に委託することができる」と民法により定められています。
遺言書により遺産分割割合が指定されていたら、基本的にその割合に従います。

 

また、遺言により遺産の分割を禁止することもできます。
以下、さまざまなパターンの遺言書による遺産分割割合の指定方法や、遺産分割禁止について確認します。

 

□遺言書により特定の財産を指定

前述した通り、被相続人が複数の財産を残した場合、不動産も預貯金も遺産分割しないかぎり、相続人全員の共有となります

たとえば、被相続人の相続財産が、3,000万円相当の土地と、3,000万円の預金のケースで具体的に考えましょう。
相続人は被相続人の妻と子です。

 

もし、相続人は被相続人の妻と子で、遺言書も遺産分割協議もなければ、土地と預金は次の法定相続分割合で相続します。
それぞれを単独の所有にしたいなら、遺産分割協議しなければなりません。

 

遺産分割協議では「遺産分割協議書」を作成することになりますが、どういったものなのかイメージしにくいと思います。

 

遺産分割協議書とはこのような書類です。

https://vs-group.jp/lawyer/souzoku/wp/wp-content/uploads/2460-02-1.png
> 遺産分割協議書のサンプルダウンロード(word)
引用元:【遺産分割協議書ひな形をダウンロードして簡単作成】書き方や文例をサンプルを交えて解説!|弁護士法人ベンチャーサポート法律事務所

 

相続人は被相続人の妻と子で、遺言書も遺産分割協議もないケース

 
3,000万円相当の土地 2分の1 2分の1
3,000万円の預金 2分の1 2分の1


なお、預金も遺産分割の対象であることに注意が必要です。
預金なので相続により当然に分割されるのではないかと思う方もいるでしょう。

 

しかし、当然に1,500万円ずつの預金を相続したことにはならないのです。
つまり、このケースでは妻と子の遺産分割協議が整わない限り、3,000万円の預金を解約して全額を引き出すことはできません。

 

このような事態をさけるため、被相続人は遺言書により、3,000万円相当の土地と、3,000万円の預金の遺産分割を、次のように指定することができます。

 

遺言書で特定の財産を相続させる(遺産分割の方法を指定する)例

 
3,000万円相当の土地 妻が相続するという指定 -
3,000万円の預金 - 子が相続するという指定


「遺産分割の指定」と言うとわかりにくいですが、「誰に何を残すか」を遺言書で定めることだと思えばよいでしょう。

 

□遺言書により相続割合を指定

次に、遺言書により遺産分割割合を指定するパターンも見てみましょう。
先ほども確認したとおり、被相続人が複数の財産を残した場合、遺産分割しないかぎり、相続人全員で法定相続分により共有します。

 

前述と同じ相続財産と法定相続人のケースで、被相続人は次のように遺産分割割合を指定することができます。

 

遺言書で相続する割合を指定する(遺産分割の方法を指定する)例

 
3,000万円相当の土地 3分の1の割合で相続する 3分の2の割合で相続する
3,000万円の預金 3分の2の割合で相続する 3分の1の割合で相続する 


法定相続分通りで相続するのなら、妻も子もそれぞれの財産につき、2分の1の割合で相続します。

しかし、法定相続人の生活や収入の状況などを考えて、被相続人が遺言書により自由に、相続割合を指定することができます。

 

法定相続人は、遺言書により遺産分割協議の指定をされたということです。

 

□遺言書により特定の財産と相続割合を指定

次に、遺言書により、特定の財産を相続させ、遺産分割割合を指定する複合的なパターンも見てみましょう。
前述と同じ相続財産と法定相続人のケースで考えます。

 

遺言書で特定の財産を相続させ、遺産分割割合を指定(遺産分割の方法を指定する)例

 
3,000万円相当の土地 妻が単独で相続 -
3,000万円の預金 3分の2の割合で相続する 3分の1の割合で相続する

 
このように、被相続人は遺言書により、財産ごとに「誰に何をどのくらい相続させたいかを指定」することができます。

 

□遺言書による遺産分割禁止

被相続人は遺言書により5年以内の遺産分割禁止を定めることもできます。
遺言書というと、遺産を分け与えるイメージが強いと思いますが、一定期間内、遺産を分割してほしくない被相続人は、遺言書により遺産分割を禁止できるのです。

 

■遺言書により遺産分割を第三者に依託

被相続人は遺言により、遺産分割を第三者に依託することができます。
遺言により指定した遺言執行者に、換価分割を委託するような場合です。

 

たとえば、「遺産である不動産は、遺言執行者が売却し、その代金を長女と次女に2分の1ずつ分ける」という遺言を残すこともできます。

この場合は、遺言執行者が不動産の売却手続き一切をおこない、被相続人の長女と次女に、代金を分配することになります。

 

■遺留分を害する遺言の効力

一定の法定相続人に認められた最低限の取り分が遺留分ですが、遺言書の内容が遺留分を害していても、かまいません。
遺留分を害された人が遺留分侵害額請求をするかどうかは、遺留分を害された人の自由だからです。

 

■遺留分と法定相続分の違い

遺留分権利者と法定相続人、遺留分割合と法定相続分は異なりますので、注意してください。

 

□法定相続制度と遺留分制度の異同

まず、法定相続分と遺留分の異同を見てみましょう。

 

法定相続分と遺留分の異同

  法定相続分 遺留分
配偶者のみ 全体を相続 遺留分を算定する財産の価額の2分の1
子のみ 全体を相続
配偶者と子 配偶者1/2、子1/2
配偶者と直系尊属 配偶者2/3、直系尊属3/1
配偶者と兄弟姉妹 配偶者3/4、兄弟姉妹1/4 遺留分を算定する財産の価額の2分の1
ただし、兄弟姉妹には認められない
直系尊属のみ 全体を相続 遺留分を算定する財産の価額の3分の1
兄弟姉妹のみ 全体を相続 認められない


兄弟姉妹に法定相続分が認められるケースでも、遺留分は認めらないので注意しましょう。

 

遺留分を算定するための財産の価額については、次の計算をしてください。


被相続人が相続開始の時において有した財産の価額+贈与した財産の価額-債務の全額

 

□具体的な法定僧俗分と遺留分

遺留分権利者の個別の遺留分割合は、次の式で算出することができます。


全体的遺留分×法定相続分の割合=個別の遺留分

 

たとえば、前述した具体的なケースで見てみると、次のようになります。


この場合は、次のようになります。

Yの法定相続分は2/3、AとBの法定相続分は各1/6でした。
遺留分については、Yの遺留分は2/6、AとBの法定相続分は各1/12となります。

 

■結び

遺産分割協議の性質や効力、どうやって遺産分割割合を定めるかなど見てきました。
遺産分割割合で揉めなければ、とくに法定相続分を知っている必要もないかもしれません。


また、遺言で遺留分が害されていなければ、とくに遺留分についての知識も必要ないでしょう。

しかし、相続人間で円滑に話合う必要が出てきたとき、基本的な知識がないと感情的になってしまって、遺産分割協議が進まない可能性があります。


基本的な法定相続人、法定相続分、相続の承認や放棄の効果などを理解し、自分で法定相続分を計算できるようにしておきましょう。
ただし、債務がある場合や相続財産が複数ある場合、法定相続分相当の額を計算するのもたいへんです。
また、そのような場合は相続人間の遺産分割協議が滞るケースもあります。

 

自身で法定相続分相当の額を計算したり、遺産分割協議をしたりするのが不安な方は、弁護士に相談してみるとよいでしょう。
とくに相続人間で争っているときは、弁護士に遺産分割協議の代理を依頼することをおすすめします。

遺産分割の割合はどうやって決める?(2)法定相続分の計算方法

行政書士のみつおです😀

 

前回は、遺産分割の割合決定方法などについて解説いたしました。

今回は、法定相続人ごとの相続分を確認してから、ケース別に法定相続分を計算してみたいと思います。

 

■法定相続人ごとの相続分を確認

次に、相続関係の知識の基本である法定相続制度について確認しましょう。
法定相続人ごとの相続分を見ていきます。

 

■法定相続人ごとの相続分割合

法定相続人ごとの相続分割合は、被相続人の配偶者を基準に考えるとわかりやすいでしょう。

 

配偶者の相続分割合

子とともに相続人となる 配偶者が1/2、子が1/2
直系尊属とともに相続人となる 配偶者が2/3、直系尊属が1/3
兄弟姉妹とともに相続人となる 配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4


なお、配偶者には内縁のパートナーや離婚した元夫(元妻)は含まれません。
また、被相続人の養子、婚外子も実子と平等の法定相続分を有します。
被相続人の兄弟姉妹が相続人となる場合、被相続人と両親の一方を異にする兄弟姉妹の法定相続分は、両親を同じくする兄弟姉妹の1/2となります。

 

■法定相続人の優先順位

被相続人の子、直系尊属、兄弟姉妹は、相続する優先順位が決まっています。
最優先が子であり、次の順位が直系尊属です。
つまり、被相続人の子がいないときに初めて、直系尊属が相続人となるということです。

 

そして、被相続人の子も直系尊属もいないときに初めて、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。
なお、前述の通り、配偶者は常に法定相続人なので、他の法定相続人とともに相続します。

 

法定相続人の順位

常に相続人 配偶者
第1順位 被相続人の子
第2順位 被相続人の直系尊属
第3順位 被相続人の兄弟姉妹

■法定相続人の注意点

代襲相続、相続の承認・放棄、相続欠格・廃除があると、相続人がかわります。
それぞれの概要を見ておきましょう。

□代襲相続について

代襲相続とは、法定相続人が被相続人により先に亡くなっているケースで、「親に代わって相続する」ことをいいます。
たとえば、被相続人Xの子Aが、Xより先に亡くなっていた場合、Aに子aがいれば、aが代襲相続人としてXを相続します。
Xの子Aの代わりに、Xの孫aが相続(代襲相続)するということです。


直系卑属は子、孫、ひ孫と何代も代襲相続できますので、注意しましょう。

 

代襲相続の可否

  代襲相続の有無 注意点
あり 孫、ひ孫など
直系尊属 なし 祖父母は代襲相続しない
兄弟姉妹 あり 1代限り(甥、姪まで代襲相続)


なお、相続放棄した人の子は代襲相続できません。

□相続の放棄

相続は、人が亡くなると自動的に発生するものですが、相続人が相続を承認したり放棄したりすることができます。
ただし、相続の承認・放棄できる期間が定められています。
これは、いつまでも相続関係を不安定にするわけにいかないためです。

 

相続の承認・放棄には以下の3種類があります。


相続の放棄や承認と期間、方法など

  相続放棄 限定承認 単純承認
期限 原則として相続開始を知ったときから3ヶ月以内
方法 家庭裁判所に申述
(限定承認は相続人全員で)
相続開始を知ったときから3ヶ月以内に相続放棄や限定承認しなければ単純承認とみなされる
効果 始めから相続人ではなかったことになる 相続財産の範囲で債務を引き継ぐ プラスもマイナスも引き継ぐ


相続放棄は遺産分割協議で「相続分はいらない」と同意することと、大きく違うので注意してください。

 

よく聞くのが、「あの人は放棄したんだから」という他の相続人の主張です。
しかし、相続放棄は生前にはできませんし、口頭でもできません。


家庭裁判所に期間内に相続放棄を申述していない相続人を除外して遺産分割協議をすることはできません。
また、遺産分割協議では債務について相続人間で誰が負担するか話合いできますが、債権者に対して対抗することはできません。


これに対して相続を放棄した人は、相続開始時から相続人ではなかったことになり、財産も債務も一切引き継ぎません。

□相続の欠格・廃除

相続放棄と違い、相続欠格事由と相続廃除は、代襲相続をさまたげません。

 

相続欠格事由とは、当然に相続人資格を失う原因のことです。
遺言書関係で相続人にふさわしくない行為をした者や、被相続人を殺害の意図で死亡させた者などが、相続欠格にあたります。

 

相続廃除とは、被相続人に対して虐待や重大な侮辱を加えた者に相続させない旨の手続きです。
相続廃除は相続欠格と違い、被相続人が遺言により廃除し、遺言執行者が手続きをしなければなりません。

■ケース別に法定相続分を計算してみる

次に、法定相続人のケース別に法定相続分を計算してみましょう。
子、直系尊属、兄弟姉妹が配偶者とともに法定相続人になるケースをそれぞれ見ていきます。

 

■配偶者と子が法定相続人のケース

たとえば、次のケースで考えます。

  • 被相続人X
  • 法定相続人妻Yと子A
  • 相続財産3,000万円


配偶者と子は配偶者が1/2、子が1/2の割合で相続分を有するので、妻Yは1,500万円、Aは1,500万円相続します。

■配偶者と直系尊属が法定相続人のケース

今度は、次のケースで考えます。

  • 被相続人X
  • 法定相続人妻YとXの父母AとB(Xの子も孫など代襲相続人もいないものとする)
  • 相続財産3,000万円


この場合は、配偶者が2/3、AとB合計で1/3の割合で相続します。

 

そして、父母は3/1を同じ割合で相続します。
したがって妻Yは2,000万円、父Aは500万円、母Bは500万円を相続します。

 

□配偶者と兄弟姉妹が法定相続人のケース

次のケースは、配偶者と兄弟姉妹が法定相続人の場合です。

  • 被相続人X
  • 法定相続人妻YとXの兄A(Xの子も孫など代襲相続人も、父母もいないものとする)
  • 相続財産3,000万円

 


この場合は、配偶者が3/4、兄が1/4の割合で相続します。
したがって妻Yは2,250万円、兄Aは750万円を相続します。

□父母の一方が被相続人と異なる兄弟姉妹のケース

父母の一方が被相続人と異なる兄弟姉妹が相続人であるケースも見ておきましょう。
次の例で考えます。

  • 被相続人X
  • 法定相続人妻YとXの兄A、妹B(Bの母はXの母と違う。Xの子も孫など代襲相続人も、父母もいないものとする)
  • 相続財産3,000万円


この場合は、配偶者が3/4、兄が1/4の割合なので、妻Yは2,250万円、兄Aと妹B合計で750万円を相続します。
兄AはXと父母の双方を同じくしていますが、妹Bの父母の一方はXと異なります。


したがって、次の計算式で、兄Aと妹Bの法定相続分を計算します。


兄A:妹B=2:1

 

このケースでは、兄Aは500万円、妹Bは250万円を相続します。

 

■結び

今回は法定相続人ごとの相続分や法定相続分の計算方法などをみていきました。

 

次回は遺言書がある場合の遺産分割割合などについてみていきたいと思います。

遺産分割の割合はどうやって決める?(1)遺産分割の割合決定方法

行政書士のみつおです😀

 

遺産分割という言葉を聞くことはありませんか?
しかし、法定相続分とどう違うのか、詳しくは知らないという方も多いのではないでしょうか。


そこでこの記事では、相続財産はどのような割合で誰が相続するか、遺産分割との関係を解説します。

 

 

■遺産分割の割合決定方法

法定相続分とは違う割合で相続したい場合、相続人全員で行うのが遺産分割協議です。
遺産分割の効力や預貯金に関する例外、遺産分割の方法などを確認していきましょう。

 

■遺産分割の効力と方法

まず、遺産分割の効力や方法などを見ていきます。

□遺産分割の効力

被相続人が亡くなり、相続人全員で遺産分割しないかぎり、相続財産は相続人全員の共有財産となります。

 

これは、相続人の自宅かどうかなどとは、関係ありません。
相続人全員の共有財産となった相続財産の所有割合は、各相続人の法定相続分により定まります。
法定相続分については後述します。

□遺産分割の例外

各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち一定の額の範囲内においてのみ、単独で権利を行使することができます。

 

ただし、この額は標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して定められる範囲内となります。
この預貯金に対する例外は、遺産分割前は被相続人の預貯金を引き出すことができず、生活費や葬祭費に困窮する相続人がいるためです。

遺産分割の方法

「共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部または一部の分割をすることができる」と民法に定められています。

 

つまり、相続人はいつでも自由に、相続財産の全部であっても一部であっても遺産分割できるということです。
ただし、遺言書があればその定めに従います。

 

また、遺産分割協議が整わずに家庭裁判所の調停を利用した場合、一般的には法定相続分割合で、各財産を分けることが多いでしょう。
「法定相続分割合で、各財産を分ける」とは、不動産は長男、預貯金は次男が、法定相続分に見合った範囲で相続するという意味です。

 

遺産分割をすると、その効果は相続開始の時にさかのぼって生じます。
つまり、相続開始時から、遺産分割により取得した相続財産の権利を有するということです。
ただし、遺産分割により、第三者の権利を害することはできません。

 

■結び

今回は遺産分割の割合決定方法について解説していきました。

次回は、法定相続人の優先順位などについて触れていきたいと思います。

 

調停でも解決しないときは遺留分侵害額請求訴訟を考えよう

行政書士のみつおです😀

 

前々回、前回から遺留分侵害額請求について解説しています。

この記事では、遺留分侵害額請求訴訟ついて紹介します。

 

■調停でも解決しないときは遺留分侵害額請求訴訟を行う

調停を行っても解決しないときは、遺留分侵害額請求の訴訟を提起するしかありません。

 

遺留分侵害額請求訴訟に関する裁判所は、請求額が140万円を超えるときは地方裁判所、140万円以下のときは簡易裁判所です。
管轄は、相手方の住所地に加え、被相続人の最後の住所地、金銭債権となるため義務履行地(請求者の住所地)、当事者が合意で定める裁判所のいずれかとなります。

 

 

■遺留分侵害額請求訴訟の流れ

まず原告(請求する側)が請求内容とその理由を記載した訴状を管轄の裁判所に提出し、訴えを提起します。
このとき合わせて証拠となる書類も一式提出します。

 

裁判所が訴状を適正に受理すると、裁判所は書類のコピーと呼出状を被告(相手方)に郵送します。
書類を送付された被告は、訴状の内容に対する認否と反論を記載した答弁書を裁判所へ提出します。

 

第1回期日では、裁判官から訴訟の進行方法の説明や、原告、被告それぞれに追加資料などの指示があります。
第1回期日の終わりには、次回期日の日程を決めます。

 

こうして、原告と被告双方が主張を行い、それぞれの主張を裏付ける証拠を提出し合って審理を進めていきます。
基本的に、原告と被告が相対することはなく、相手方の提出する主張に対する認否と反論を書面によって繰り返していきます。

 

ただし通常は、審理の途中で裁判官を仲裁役として原告と被告の話し合いの場がもたれます。
この話し合いによって合意がまとまる場合は、調停のときと同じように調停調書が作成されます。
このように、裁判において双方の合意がまとまることを、裁判上の和解といいます。

 

もちろん、調停でもまとまらなかった話し合いですから、裁判上の和解が成立しないこともあります。その場合は、判決で決着をつけることになります。
原告、被告双方の主張が出て、提出された証拠や証人の調べが終わったら、裁判官が判決期日を定め、その期日に判決が下されることになります。

 

■遺留分侵害額請求訴訟の注意点

遺留分侵害額請求訴訟は、当事者だけでも行うことができますが、現実的ではありません。
本格的な裁判手続きを、法律知識のない一般の方が行うには無理があります。

 

弁護士をつけずに本人だけで訴訟提起した場合、裁判所側はある程度手続きの説明や、必要な主張や証拠が欠けていないか注意をしてくれますが、裁判には相手側もいますから、裁判所は中立を保つために、どちらか一方に特別な配慮をすることはできません。

 

訴訟に至ったということは、調停を行っても解決しなかった難しい問題ということですから、自分の遺留分を守るために、弁護士の力を借りることをおすすめします。

 

元々、遺留分侵害額請求は相続財産の遺留分という大きな金額を請求するものですから、とても難しい法律問題です。
多くの場合、遺留分侵害額請求に対して、相手方が不当に金銭支払いを拒んでいるだけという問題ではありません。
遺留分の侵害額算定の前提となっている遺言書の有効性、遺産の評価額、相続人の範囲といった点についての争いによって、話し合いが進まないというケースがほとんどです。

 

訴訟に至ったときに限らず、早い段階で弁護士に相談することで、早期解決する場合もあります。
遺留分の侵害額にもよりますが、困ったときは弁護士に相談しましょう。

 

 

 

■結び

3回に渡って遺留分侵害額請求について解説してきました。

 

遺留分侵害額請求権とは、自分の遺留分が侵害されたときに、受遺者に対して遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができる権利です。

 

遺留分侵害額請求については、証拠を残すために内容証明郵便を送付して相手方へ請求を行った後、相手方と協議することが一般的です。
ですが、相手方との話し合いが進まない、できないという場合は、家庭裁判所へ調停の申立てを行うことができます。
家庭裁判所への遺留分侵害額請求調停の申立てには、申立手数料として1,200円分の収入印紙と連絡用の郵便切手代が必要ですが、弁護士等へ依頼することなく進めることが可能です。

 

家庭裁判所の調停は、裁判官1名、調停委員2名が調停委員会となり、申立人、相手側それぞれとの話し合いによって、双方が合意できるように進めていきます。
何度かの調停の後、双方が合意すれば「調停調書」が作成され、調停は終了します。
この「調停調書」には、判決と同じ効力がありますので、内容に従わない場合は強制執行も可能です。

 

調停によっても解決しない場合は、遺留分侵害額請求訴訟を提起するしかありません。
この訴訟は、当事者だけでも行うことができますが、法律知識も必要になりますし、そもそも訴訟にまで発展した問題ですから、弁護士に相談し依頼することをおすすめします😀